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競馬回顧 2017年5回阪神

第34回ホープフルステークス(GⅠ)

タイムフライヤー

前後肢にバンテージ。馬体も締まって来たが、それ以上に歩様が一変。1ヶ月で最早別馬の域で、一歩一歩が力強くなった。今日はゲートも少し悪かったが、やはり出脚が速くなく、後方から。GⅠ昇格初っ端は、スローになるか、ハイペースになるか、極端になり易いのだが、今回は流れた方のパターン。3角から少し番手を上げつつ、各馬の手応えを見極めて、相手をジャンダルムと決めて追い比べに持ち込み、登坂力で決着を付けた。細かい部分で上手く行った部分は有るが、自在性が有るのは強み。今日の内容なら底力という意味でも奥は有りそう。見た目の鮮やかさから、2歳チャンプはダノンプレミアムということになるのだろうが、距離が延びれば来年は逆転へ。

ジャンダルム

+10kg。多少太い程度で、馬はこれでも良いが、初コースでテンション高いのがマイナス。出脚は速かったが、馬が行きたがっており、宥めつつ中段から。折り合いは2角で付いた。ずっと外を回されていた割に手応えが良く、4角手前から進出して直線入口で先頭。タイムフライヤーに競り負ける形になったが、外枠から正攻法で乗られての2着なら悲観する内容ではない。距離もこの乗り方が出来るなら、乗り役が問題ないと判断しているのだろう。勿論、今日経験出来たことも大きい。馬体増も今後へ向けて良い方に出る筈で、先々明るい。

ステイフーリッシュ

スカッと見せるステイゴールド産駒の典型。見栄えはしないが、歩様に硬さがないのが何より。ゲートを外へヨレ気味に出て、出脚が付かず後方から。それでもジャンダルムの直後だから展開上は絶好の形。3角過ぎにジャンダルムが動いた際に一瞬付いて行けず、4角で包まれている間にタイムフライヤーにマクられてしまったのが痛かった。最後は盛り返してジャンダルムとはクビ差。逡巡がなければ2着も有った内容。ステイゴールド産駒だけに回り脚自体は有る筈で、今日はキャリアの浅さが出たと見たい。逆にいえば来年の上積みは大きい。

サンリヴァル

+8kg。一息入ったが、緩んだ印象はなく、ほぼ成長分。何より気配が良かった。スタートして少し内にヨレたが、出脚は速くスッと2番手。1角でトラインが外にフクれてアオりを食ったが、大きな影響はなかった。ただ、道中はジュンヴァルロが掛かり気味に被せに来て結構キツい展開になった。一旦立て直して息を入れたとはいえ、差し馬にやられたのは仕方がないところ。ズルズル行かなかっただけでも充分評価出来る4着。乗り役の話では決め手という点で課題が有る様だが、馬力とスタミナを感じさせる内容。道悪での一発に注意したい。

ナスノシンフォニー

2人曳き。前肢にバンテージ。この時期の牝馬としてはしっかりした馬。とはいえ、もう少し落ち着いて欲しい。大外枠で他馬に影響がなかったのは不幸中の幸いだったが、スタート直後に外に大きく逸走し、後方から。挽回して外に馬を置く分には問題なく走れていた。インに居た影響で、勝負どころではかなり待たされる形となったが、サンリヴァルとは僅差の5着迄追い上げて来た。牝馬が2000mでこれだけ走れれば文句なし。気性面に課題が有る牝馬は上手く行く確率は低いが、当たればワールドクラスになっても不思議はない。

ルーカス

2人曳き。オーストラリアンブリンカー。物見はなくなったが、このメンバーに入ると完成度の低さが明らか。前走東京戦よりは出脚が有って中段の外。道中は少し力んでいた。勝負どころでジャンダルムに追わせていったが、最後は内にモタれて完全に脚が上がっていた。現時点での力量差ということになるだろうが、前走はむしろズブい位に映っただけに、2000mでのオーストラリアンブリンカーが裏目に出た印象も。

第62回有馬記念(GⅠ)

キタサンブラック

2人曳き。前肢にバンテージ。-2kg。幾らかでも馬体スッキリ。この馬が一番良く見せたのは今春の大阪杯で、絞れて来ると全盛期ではないというのが分かる。例に依ってゲート内が煩く、サトノクラウンがゴネて最悪の形になったが、奇跡的に好発。こうなれば出脚と枠の利で行く一手。他の有力どころが中段より後方に回る展開で、楽逃げの形に持ち込めた。1000m通過61秒5とスローに落として、ほぼこの時点で勝負が付いていただろう。3角過ぎから他馬は動いているのだが、この馬の位置迄は届いておらず、自身の手応えを勘案しつつ直線入口で突き放して快勝。やはり自分のパターンに持ち込めれば強い。これで大団円ということになるが、2分33秒6は過去3年で最も遅い決着。この時計に持ち込める出脚が有るともいえるが、下見通り衰えが見え隠れしていたのも確か。これでベストの引き際。「スタートが良ければ先手を取ろうと思っていましたし、道中はリラックスして走らせることを心掛けました。1周目の4角で若干力みましたが、それ以降は落ち着いて走ってくれましたね。勝負どころでの手応えは昨年よりも良かったですし、この馬らしい走りを見せてくれました。最後をいい形で終えることができてホッとしています。本当に強い馬ですね。このような馬にめぐり会えて幸せです。 (武豊騎手・週刊競馬ブック)」

クイーンズリング

馬体が締まって、歩様に勢いが有った。この時期の牝馬にしては毛ヅヤも冴えており、ケチの付け様がない。枠の並びから当然キタサンブラックを意識するところだが、何とかゲートを決めて3列目から。キタサンブラック直後の位置迄積極的に乗る手も有っただろうが、多少距離不安も有ったのと、トーセンビクトリーの出脚が速く、少し引っ張って一列後ろになっていた。道中はインでジッと我慢。4角でも少し追い出しを遅らせて、坂下から一瞬の脚を利かせて2着浮上。勝てはしなかったにせよ、大健闘。とはいえ、最後は首の下げ下げで一瞬はシュヴァルグランに出られていた。そのシュヴァルグランに不利も有っただけに、今日はこの馬にツキが味方したという以外にない。

シュヴァルグラン

2人曳き。+4kg。栗毛が夕日に映えて見栄えはするが、多少緩い。満点はやれない。前走東京戦は4番手からだったが、この枠でこの馬の出脚だと、内の馬の方が速く、中段から。これは仕方がないが、外回されてコーナーを回る度に番手が悪くなっていたのと、この馬自身も回り脚がなく、特に4角で置かれそうになっていたのが痛かった。結果的にスワーヴリチャードに寄られる形となり、2着有った筈がクイーンズリングに割って入られ3着に。やはり中山向きではなかったということになるが、昨年6着だったことを考えれば大分前進している。来年に掛かる期待は大きい。

スワーヴリチャード

+8kg。前走東京戦も+10kgだったが、また馬体増。とはいえ、それ程太くは見せない。更に成長している。半馬身程ゲート後手。序盤は結構行きたがっていた。何とかシュヴァルグランを前に置いて宥めようとしていたが、1角迄は只管引っ張るしかなかった。スローはこの段階で気付いただろうが、このレースでヴィクトワールピサで途中から動いての成功例が有るミルコ・デムーロ騎手といえども、道中は我慢するしかない。結局、その焦りが直線で内へモタれるのを修正し切れない形になってしまった。何処か弱いところが有るのか、東京戦をスキップする等、結構大事に使われており、ここ迄大崩れなく走って来たが、まだまだ鍛えて行くべき部分は残っている。

ルージュバック

2人曳き。+6kg。見栄えがしないのは何時ものこと。決して緩い印象はなく、歩様も維持出来ていた。ゲートで後扉を蹴っていたとのことで、ダッシュが付かず後方から。腹を括ってインに入れ、兎に角直線迄我慢。馬群の中へ突っ込んで、不利で下がって来たサクラアンプルールも上手く避けつつ、際どいところ迄伸びて来ている。これもこれで引退となる様だが、今日もゲートを失敗した様に、細かいところで不器用だったのは残念。少なくともクイーンズリングよりは強い。

第12回阪神カップ(GⅡ)

イスラボニータ

気配は地味だが、高値安定。馬体の張りが有った。半馬身程出負けしたが、少し促して好位直後。ベテランだけに折り合いは問題ないが、3角手前で前が狭くなり、少し手綱を引っ張る場面が有ったのは痛かったか。それでも何とか捌いて4角でダンスディレクターの直後。ダンスディレクターの手応えで相手を気付いたのだろうが、外から併せ馬に持ち込んで最後は底力でネジ伏せた。短距離だけに道中のロスは影響有った筈で、リカバリーが上手く行ったにせよ、完勝といえる内容。これで引退とのことだが、日曜日のキタサンブラック同様に無事是名馬を地で行った。かつては一芸に秀でた馬の方が種牡馬向きだったが、近年は素質だけでGⅠを勝てる程甘くはなく、先々を考えればこういう馬の方が成功する確率が高い。

ダンスディレクター

前肢にバンテージ。+8kg。数字が増えた分だけ実になっている。毛ヅヤも冴えており、やはり冬場の方がデキが良い。アポロノシンザンの先行策に乗る形で好位から。どちらかといえば矯めて乗られるタイプの馬で、1400mなら尚更だっただろうが、意外に折り合いは付いていた。流れに乗って完璧に運べたが、この馬をマークしていたイスラボニータに競り落とされる格好でハナ差負け。勿体ないといえば勿体ないが、3番手以下は突き放しており、更にレコード駆けとなれば、馬も乗り役も責められないとところ。文句なく完全復調。

サングレーザー

現状のデキとしては悪くないが、まだ力が付き切っておらず、歩様が頼りない。ゲートは五分に出ているが、アポロノシンザンに叩かれる展開となり、ならばと割り切って後方待機。これはこれだが、18頭のフルゲートで内回りの大外となると流石に厳しいところ。メンバー中最速の上がりでも有り、良く走っている方だろう。現状の状態でこれだけ走れるなら来年は王者としての期待したいところだが、かつては追い込み一手だったダンスディレクターが今回先行して好走した様な、もう少し肉体面、精神面での強かさが欲しい。

モズアスコット

連勝馬らしいデキの良さは伝わって来るが、トモの送りが硬いのはマイナス。少し出し気味に好位直後。展開上、外になってしまったことも有るが、妙に強気に乗られており、3〜4角中間で既に仕掛けていた。流石にこうなると終いが保たないのは仕方がないところ。坂を上る途中で苦しがって外にヨレ、そこからは脚色が一緒になってしまった。マルタンガールを着用している様に、首が使えておらず、動きに硬さが有る気にならないでもないが、重賞初チャレンジでこれだけやれれば先々明るいだろう。

ビップライブリー

下見は最後方を周回。相変わらず気難しいが、馬自体は悪くない。ゲートで微妙に安目を売った割には出脚が速く、道中はダンスディレクターの直後から。何時もそうだが、下見の気配は関係なく、レースに行くと折り合いは付く。ただ、近くに居たイスラボニータとは勝負どころでの機動力が違っていた。前走京都戦とは相手が違ったということになるが、その前走で述べた様に、有る程度攻めて乗られても結果が出る様になっている点は進境が有ったといえる。

レーヌミノル

+8kg。気配が地味なのは前走京都戦同様だが、多少緩い。歩様が悪くないのは救いだが。ゲートを決めて、この馬の出脚で好位から。ただ、中途半端な枠で内外から来られて、結構プレッシャーの掛かる展開。乗り役の話に有った通り、怯んだ様な場面が何度か有った。直線は何とかバラける位置迄持ち出したが、大して伸びず。前走からもう少しやれて良い筈で、牡馬相手だと枠や展開に注文が付く。

第69回朝日杯フューチュリティステークス(GⅠ)

ダノンプレミアム

前後肢にバンテージ。少し動きが硬い気もしたが、馬体は垢抜けた造りで問題なし。気配も良かった。好発。半馬身抜けた。出脚も速いのだが、ハナへ行く気はなく、むしろ宥めるのに苦労していた程。ずっと良過ぎる位の手応えで、馬を前に置いて我慢させ、直線で前が開いた一気に突き抜けた。マルゼンスキーの大差勝ちというのが過去に有るが、3馬身半差は1993年ナリタブライアン以来。現時点でそれ位の能力的アドバンテージは有るだろう。ただ、明らかにマイラー。出脚が有って、時計もレースレコードと、現代競馬向きでは有るのだが、クラシック路線を目指すとなるとやはり疑問は残るところ。今年2歳馬が当たりに当たった中内田厩舎の手腕が問われる。

ステルヴィオ

2人曳き。気配は絶好。歩様もしっかりしており、デキ自体も良い方だろうが、馬自体に迫力を感じず。あまり出脚は速くなく中段やや後方から。道中、特に序盤の行き振りが悪くて、その点でも位置取りを悪くした面が有った。直線向いても狭いところを割れずに少し逡巡してしまった。要はエンジンの掛かりが遅い分、距離不足ということになるのだろう。それでこれだけ走れれば文句なし。スプリントで名を馳せたロードカナロア産駒だが、ロードカナロア自身がマイルでも勝っている様に、この馬自身に限らず、産駒は距離の融通性が有る点は覚えておきたい。

タワーオブロンドン

スプリント寄りの体型だが、キビキビした歩様。気持ちが前向きなのは何より。前走東京戦程ではないが、今日もゲートを五分に出て中段追走。ダノンプレミアムをマークする形。折り合いという点では多少行きたがる場面は有ったにせよ、それでもダノンプレミアムよりも遥にスムーズだった様に見えた。直線に向いてからもそれなりに伸びているが、追い出して直ぐの反応が微妙に鈍かったのと、坂を上がって甘くなった分の3着。今日の展開なら最低でも2着はないと値打ちはないところ。追っ掛けバテに近い形で完敗の内容。路線を考える必要は有るだろう。

ケイアイノーテック

前後肢にバンテージ。明らかに歩様が硬い。叩いた分だけ馬体が締まって、造りはしっかりしているが、ディープインパクト産駒らしさがなく、母系の影響が強そう。出脚はあまり速い方ではなく中段やや後方から。折り合いは付いていた。直線入口が多少強引だったが、無理やり捌いてジワジワ伸びてここ迄。前走京都戦でも触れたが、トビは大きいものの、回転不足。外から交わされたステルヴィオとは明らかに回転数が違っていた。それでこれだけ走れば力は持っているということになるが、現状はダートの方が稼げそう。

ダノンスマッシュ

2人曳き。前肢にバンテージ。+8kg。馬自体は見劣らないが、数字分だけ少し余裕が有る。少しイラついていたのもマイナス。ゲートで躓いて、出遅れ1馬身不利。腹をくくってインに入れて直線迄只管我慢。目の前がタワーオブロンドンだったが、そのタワーオブロンドンが一瞬モタついてしまい、直線は右往左往する場面が有った。着差が着差だけに惜しい。ゲートがマトモだったら捌き損ねもなかったところで、2,3着は有った内容。

第3回ターコイズステークス(GⅢ)

ミスパンテール

馬体はこのメンバーでも上位だが、相変わらず煩い。発汗の跡も気になった。ゲートは五分に出ているが、あまり行く気なく後方待機。横山典弘騎手らしく、直線迄ジッとして狭いところをコジ開けて突き抜けた。着差が着差だけに100回やったら100回別の結果が出る様な競馬なのだろうが、気性的な問題が有って、比較的締まった流れになって気を抜かずに走れたのはこの馬にとって良かったのだろう。あと、この馬自身のベストパフォーマンスはチューリップ賞。パワーが有って登坂力が有るということもいえる。今後も気持ち一つ。

フロンテアクイーン

シープスキンノーズバンド。多少チャカついていたが、馬体はフックラ。悪くない状態。少し出し気味に好位から。出した分だけ行きたがったが、直ぐに折り合いは付いた。4角で一息入れた分、直線は坂下迄追えない場面も有ったが、バラけてからはしっかり伸びている。どちらかといえば東京向きの馬で、ジワジワ脚を使うタイプ。一瞬の決め手でやられたのは仕方がないところ。血統からもう少し距離が有って良い様に思うのだが、2000m以上だと決め手負けすることが多く、ミスパンテールとは違う意味でソコソコ流れる小回りのマイルや1800mが向いている。

デンコウアンジュ

前肢にバンテージ。馬体には張りが有ったが、もう少し歩様に柔らかみが出ると理想的。若干出負け気味だったことも有るが、行く気なく後方から。目の前に6枠2頭が居て、この進出に乗って直線だけ大外へ。東京向きの馬が台頭する展開で、ヴィクトリアマイル2着が金看板のこの馬も良く伸びているが、ミスパンテールとの間に2頭噛んでしまうと届かないのは致し方がないところ。賞金が欲しかっただけに尚のこと悔しいハナ差となった。少なくともフロンテアクイーンとは能力で負けた印象はない。

ラビットラン

前後肢にバンテージ。歩様は維持出来ており、筋肉の輪郭も浮いていた。下見からは減点材料はない。出たなりで中段から。向正面ではミスパンテールの外。インを突くつもりはなかった筈で外を回したのは予定通りだっただろうが、エテルナミノルのマクりに付き合わされたのは痛かった。伸びてはいるが、早仕掛けになり、最後の最後で詰めを欠いた。55kgも影響しており、評価を下げる様な内容ではない。改めて次走以降期待したい。

エテルナミノル

-8kg。細い印象はなく、キッチリ仕上げて来たといったところ。ゲート内での駐立が悪く、出遅れ1馬身不利。そのまま後方から。3角過ぎから外を押し上げて強引に行ったが、流石に甘くなった。とはいえ、普段先行している馬がこれで僅差の5着なら悪い内容ではない。これなら重賞でも足りる。

リエノテソーロ

2人曳き。前肢にバンテージ。気性面のコントロールが鍵となるが、下見は堪えていた。この時期の牝馬にしては毛ヅヤが良く、NHKマイルカップよりも更にデキは良い。好発。1馬身抜けてハナへ。これはこれで良かったが、ペイシャフェリスに掛かり気味に来られ、ペース自体は速くなくとも息の入れ辛い展開になった。坂を上る辺り迄は先頭で踏ん張っており、トップハンデタイだったことを考慮しても0.2秒差だから、6着でもほぼ勝ちに等しい内容。これなら完全復活。

第69回農林水産省賞典阪神ジュベナイルフィリーズ(GⅠ)

ラッキーライラック

前後肢にバンテージ。例に依って迫力の有る馬体。一歩一歩が力強く、下見は文句なし。前走東京戦程ゲートは速くなかったが、ジワッと行かせて中段。外からコーディエライトとロックディスタウンが行って連られそうになる場面も有ったが、直ぐに折り合いは付いた。4角の手応えからリリーノーブルが相手と気付いた様で、余裕を持って外へ持ち出し、坂を上る脚で決着を付けて快勝。決してペースが速かったわけではないだけに1分34秒3もまずまず優秀。キレで勝負するタイプではないだけに牡馬相手でどうかという面は有るが、今日でも上がり3F33秒7とまずまず。ケチは付けられない。あとは昨年のソウルスターリングの様に気性的な問題が出ないことを祈りたい。

リリーノーブル

たった中1週だが、前走京都戦から馬が一変。歩様、見た目共明らかに力強くなった。この馬の出脚でジワッと行かせて好位から。こちらはコーディエライトとロックディスタウンに少し連られたクチ。それでも4角の手応えは充分で、前はキッチリ捕まえているのだが、ラッキーライラックの方が底力が上だった様で、ネジ伏せられて2着。とはいえ、前走京都戦は馬が非力に映ったことを考えると一戦毎に馬が良くなっている。今日のままだとGⅠでは通用しないが、この成長力は魅力。

マウレア

-4kg。毛ヅヤは良かったが、数字は減らないに越したことはない。現状でギリギリ。半馬身程出負けしたが、周囲の馬が行ってくれたことでスペースが出来、何とか中段は確保出来たのは大きかったか。この位置で折り合いを付け、4角回ってリリーノーブルの直後。坂下迄は食らい付いていたものの、ラッキーライラックが内にモタれて来て、一瞬逡巡してしまった。ラッキーライラックを行かせてからは再び差を詰めている。とはいえ、この馬自身も登坂力が欲しいところ。パワー不足は馬体減が響いているのだろう。このメンバーでも能力そのものは大差ないが、今後は馬力強化が求められる。

トーセンブレス

2人曳き。前後肢にバンテージ。-8kg。見た目には馬体減は気にならず。ただ、気負っていた。この馬自身の出脚というより、内外の馬が速く、後方から。序盤だけ行きたがっていたが、ガッチリホールドして何とか折り合いは付いた。直線は外。上位3頭の後追いになっており、今日はこれで仕方がないのだが、とはいえ少し3着マウレアと着差が付いたのも確か。気性面も少し気になるところで、次走以降人気になるなら嫌ってみたい気も。

モルトアレグロ

2人曳き。前肢にバンテージ。前向きな気性で、馬体もコンパクトに纏まっていた。下見だけなら完全なマイラー。出脚は悪くないが、これも少し行きたがっており、位置取りよりもまず馬を前に置いて折り合いを付ける形。マウレアの直後、つまりトーセンブレスよりは前から追い出しており、今日の展開なら4着は欲しいところだが、トーセンブレスに追い負けてしまった。外枠がキツかったのも確かだが、これも気性面が今後の鍵となる。

ロックディスタウン

2人曳き。札幌戦よりは馬体が締まっていた。ユッタリ歩けていた点にも好感が持てる。強いていえばもう少し歩様の力強さが欲しい。出脚は決して速くないが、枠不利を嫌って先行。一つ内のコーディエライトが行ってくれた分、まだジワッと行けた印象も有ったが、それでも道中は結構力んでいた。こうなると終いが持たない。一瞬だけ先頭に立ったが、そこ迄。札幌戦から直接だと流石に間隔が開き過ぎていたか。ヤマニンシュクルの例も有るが、当時は札幌戦が10月頭の開催で、今日は精神面で出来ていなかった。今後へ向けて色々工夫は必要だろうが、これはこれで良い経験となった筈で、改めての期待。

第10回カペラステークス(GⅢ)

ディオスコリダー

前後肢にバンテージ。締まった馬体からデキの良さは伝わって来るが、少し気負っていた。好発も、無理には先行せず中段の外。3角手前迄は比較的真っ直ぐ走っていたが、3角で少し番手を上げてコースロスを最小限に留める意図は有った様だが、それでも4角は内ラチから4頭程外。決して楽な形ではなかったが、力任せに押し切った。3走前に先行して失敗して以降、ここ2戦は比較的矯めて乗られているが、それが良い方向に行っている。1200mでも乗り方を工夫している以上、今後は1400m,1600mへの対応が鍵ということになるが、スプリンターとしては近年最強レベル。

スノードラゴン

2人曳き。シープスキンノーズバンド。前肢にバンテージ。真っ白な馬体で毛ヅヤは良く分からないが、歩様の硬ささえなければ力は出せる馬。出脚は決して悪くなかったが、好発切ったディオスコリダーが控えたことで、その直後から。直線も後を追う形でここ迄。手前を替えるのにモタつくので外枠の方が競馬がし易い馬で、久々に自分の力を出し切れた。全盛期でもムラは有った馬と考えれば、全く衰えはない。

ブルドッグボス

2人曳き。前後肢にバンテージ。パワフルさは感じないが、スカッとした造り。歩様もしっかり。ゲートで若干安目を売ったが、出脚でカバーして中段から。直線迄ずっと馬群の中で競馬を進める形となり、特に4角ではディオスコリダー、スノードラゴンに先を越されたのも痛かった。実質的には態勢決した後に追い込んで来た形。これでも今日は良く追い込んでいる方だろう。枠に殺されただけで、相変わらず堅実。

ドラゴンゲート

前肢にバンテージ。+16kg。太いのは確かだが、緩んでおらず毛ヅヤも良かった。デキ自体は高いレベル。芝での出脚が圧倒的に速く、スッとハナ。中山1200mで前半3F34.0秒は決して速い方ではなく、それだけ先行争いに決着を付けるのが早かった。4角を楽な手応えで回って、直線を向いてからも一旦は突き放しているのだが、坂を上ったところで甘くなった。今日の展開なら最低でも馬券圏内ないと厳しい気もするが、一応は太目が祟ったと甘目に評価しておきたい。何れにしても次走真価が問われる。

ニットウスバル

多少ボテッと映るが、ダートのスプリント戦なら問題はない筈。気配も良かった。出遅れたというよりは、ゴチャついてダッシュが付かず後方から。道中は動くに動けない形となったが、4角で上手く立ち回ってスノードラゴンの直後へ出て来れたのが不幸中の幸いだったか。もうちょっと食らい付いて欲しかったものの、5番人気の人気通りには走って来た。今後も展開一つ。

第53回中日新聞杯(GⅢ)

メートルダール

シープスキンノーズバンド。前後肢にバンテージ。多少気負っていたが、馬体にはキレが有った。最初から油断すると引っ掛かりそうになっており、ジワッと乗られて中段やや後方から。道中とずっとそんな調子で手応えが良く、直線向いて直ぐにGOサインが出るとアッという間に捕まえた。ステッキは数発入っていたが、あまりに早目に抜け出して気を抜かせない程度のモノで、ほぼ楽勝といえる内容。頭の高さ故に、今春の新潟戦では直線が長過ぎる様な雰囲気も有ったが、中京迄なら我慢してくれることが分かったのは収穫。今後も脚の使いどころひとつ。

ミッキーロケット

+6kg。GⅠへ入ると見劣りする馬だが、このメンバーだと垢抜けた雰囲気は有る。歩様も以前と比較すればしっかりして来た。ゲートが多少悪いのは何時ものことだが、意外に出脚が有って好位直後。元々長いところで走っていたので折り合いも問題はなかった。ただ、勿体なかったのが4角。コーナーで外へ膨れる癖が有り、慎重に乗っていた間にメートルダールに交わされて、ここでの勢いの差が付いてしまったのが痛かった。それでもハンデを背負ってジワジワ伸びて2着確保したのが地力の証明。出脚が明らかに強化していた点も好感が持てる。

ロードヴァンドール

2人曳き。遮眼革。+6kg。多少腹回りがボテッと映るが、許容範囲。満点ではないが、充分走れる状態。出脚は速くなかったが、他馬が引いてくれて1角時点でハナ。後続もピッタリ付いて来てはいたが、1000m通過60.7秒だからマイペースといえるだろう。直線でも脚が残っており、負けたのは決め手の差。血統故なのか、長いところは使われてないが、今日の内容だけなら2400m辺りで逃げた方が良さそう。2000mで逃げ切ろうと思えば、もう少し出脚を強化するか、道中のペースを上げる必要が有る。

ショウナンバッハ

遮眼革。小ぢんまりとした造りだが、馬体は締まっていた。枠が遠くて控えるしか手がなく後方から。道中も折り合いに専念してジッと待機。直線も、インを突けず外へ出すしかなかったが、近くに居たマウントロブソンには伸び勝っており、この4着はほぼベストに近い結果だろう。これで重賞では3回連続掲示板を確保。そろそろ馬券になっても不思議はない。

マキシマムドパリ

2人曳き。馬に活気が有る。馬体も充実しており、高値安定。出脚は決して速くないが、ロードヴァンドールに抵抗しつつ2番手。下見は少し煩い位だが、それでも折り合いが付くのがこの馬の長所。直線向いてロードヴァンドールへ馬体を合わせに行ったが、捕まりそうで捕まらず。一瞬は1馬身近く突き放されたところをハナ+アタマ差迄盛り返しており、スタミナは見せているのだが、もどかしい内容。とはいえ、55kgを背負って牡馬相手に攻めたレースだっただけに、充分頑張っているといえる。連覇が懸かる年明けの当地限定戦が目標となるだろうが、ハンデさえ見込まれなければ達成濃厚。

ジャパン・オータムインターナショナル 第18回チャンピオンズカップ(GⅠ)

ゴールドドリーム

前後肢にバンテージ。+14kg。数字は増えているが、皮膚を薄く見せてデキ自体が良さそう。ただ、この距離でテンション高いのは歓迎材料ではなかった。出遅れ1馬身不利も、押してインへ突っ込みつつ、中段やや後方辺りの位置は確保。これでそれなりに脚を使っている様に見えたのだが、スローということも有ってか、インで脚が矯められており、直線だけ外へ持ち出されると切れに切れた。成績にムラが有る様に脚の使いどころは難しいのだろうが、一点突破の競馬で快勝。今日はそれ以上の評価はし辛い。昨年の覇者、サウンドトゥルーが今年凡走した様に、今後も展開次第という面は否めない。

テイエムジンソク

多少煩いのは何時ものこと。スッキリとした造りで、毛ヅヤも維持しており、高値安定。枠は遠かったが、出脚を利かせて2番手。乗り役には自信が有った様で、コパノリッキーは何時でも交わせるとこの位置でガッチリ抑えての追走。直線向いた段階で後続と少し距離が出来たのも絶好の形となった。追い出してコパノリッキーは想定より渋太かったのだろうが、それでもラスト100mで先頭。ただ、その時点ではゴールドドリームの勢いが違った。飛び道具にやられただけで比べ馬には勝っている。ただ、次走は年明けの東京戦とのことで、マイルへの対応は鍵となる。

コパノリッキー

+9kg。多少腹回りがボテッと映る。歩様は悪くないが、満点はやれない。今年は好発。2番手のテイエムジンソクと枠の差が有ったことで、1角へ楽に入れたのが大きかった。道中もテイエムジンソクが抑えてくれたことで1000m61.6秒とスローに近い流れに持ち込めた。4角迄持ったままで、今日の展開なら何とかしたかったところだが、テイエムジンソクに競り落とされ、更に外からゴールドドリームの決め手に屈した。行き振りの面で、結果的に前走大井で1200mを使っておいて良かったということはいえるだろうが、それでも負けたのは往時の力がないと見るのが妥当だろう。次走大井を使って引退だそうだが、手頃な引き際。

ケイティブレイブ

前後肢にバンテージ。+9kg。これも少し腹回りが緩い。毛ヅヤが落ちているのは冬場だけに仕方がないとしても、歩様もイマイチ硬さが残っていた。コパノリッキーが出遅れた場合はハナへ行く手も有っただろうが、行ってくれたことでその番手から。序盤だけ多少引っ張る場面は有ったが、基本的には流れに乗れた。直線も不利なく外へ持ち出せているのだが、瞬発力が足らずジリジリとした伸びだった。中央での勝利は昨年1月の500万条件迄遡らなければならず、こんなモノかも。裏を返せば次走大井で狙い目に。

アウォーディー

前後肢にバンテージ。キビキビ歩けていて、馬体も充実。馬は文句なし。ゲートは出ているが、テイエムジンソクに叩かれてワンテンポ待たされる形となり、6番手辺りから。この位置取りも想定より1馬身後ろだったと思うのだが、前に居た好位グループが動いてくれず、直線向いて前との差が開いてしまったのも痛かった。ゴールドドリームには並ぶ間もなく交わされていたが、こうなると無残。最後迄止めずに走っていたのはせめてもの救いだが、決め手を要求される展開となり不発で終わった。

第68回チャレンジカップ(GⅢ)

サトノクロニクル

-10kg。馬体減は見た目に気にならず。テンション高いが、土砂降りの前走京都戦よりはマシ。2走前の中山戦で感じた非力さはなくなった。ゲートは決して速い方ではなかったが、少し促して好位から。当初はスーパーマックスが内に居たが、向正面半ばでラチ沿いへ寄せて脚を矯め、4角を多少強引に捌いて、直線入口で先頭。一瞬の勢いはデニムアンドルビーの方が良かったのだが、登坂力で振り切ってクビ差。戦前は、ドン尻強襲やイン突き等、乗り方に工夫が要る気もしたのだが、正攻法で勝てた点は高く評価したい。下見通り、馬が成長しており、現時点でGⅡ級。

デニムアンドルビー

前後肢にバンテージ。高値安定。歩様にバネを感じさせる。ゲートも悪かったが、例によって行く気なく後方から。何時もなら直線迄待ってからブッ放すのだが、今日は何時もより早目。内回りを考慮しても早仕掛けで、3角位から少し番手を上げて、4角で好位。直線入口ではほぼマクり切っていた。流石に最後は甘くなったが、ブレスジャーニーが外から来てもう一踏ん張りしている。久々の好走。とはいえ、3歳時のキレ味がなくなっている前提の策だった気もしないでもない。舌がハミを越していたのも関心出来ず、要は衰えのサイン。

ブレスジャーニー

前走京都戦から出来ていた。踏み込みも決して悪くない。半馬身程出負けして後方に近い位置。インで折り合いは付いていた。スムーズだったが、3〜4角中間で、デニムアンドルビーに被される形となったのは地味に痛かったかも。デニムアンドルビーを行かせてから後を追う形でここ迄。着差が着差だけに細かいミスが響いて来るということにはなるのだが、この馬自身も手前が替わっていなかった。右回りに対する経験のなさが出た感も。裏を返せば能力差はそれ程ない。

モンドインテロ

オーストラリアンブリンカー。2000m仕様なのか、何時もより気合が乗ってキビキビ歩いていた。馬体にも張りが有ってデキも良さそう。流石にこの距離だと出脚が苦しく、押しても後方から。これもインに居たクチで、デニムアンドルビーが動いて、更にブレスジャーニーが行ってからの外。最後迄ジワジワ伸びているが、この距離で決め手勝負となると流石に分が悪かった。昨年3着の中山戦を捨ててこちらへ使って来た理由がイマイチ分からないが、中山に使っていれば3着有った筈で、微妙な勿体なさが残る。

スーパーマックス

-11kg。前後肢にバンテージ。中央馬相手だと流石に見劣るが、馬のフォルムはどちらかといえば芝馬。好発。出脚も決して悪い訳ではなかったが、流石に地方からの参戦でレースを壊す訳にも行かず、好位から。サトノクロニクルとデニムアンドルビーの間に入って、結果的にサトノクロニクルの勝利をアシストした感も有ったのだが、この馬自身は只管内目を立ち回って入着。勿論、中央ならオープン戦に使うしかないのだが、1000万クラスなら楽勝しそう。

第51回スポーツニッポン賞ステイヤーズステークス(GⅡ)

アルバート

筋肉が浮いて前走東京戦以上。歩様にも力強さが有り、過去3年の中でも一番良く見せた。外枠だったことも有り、内の出方を窺いながら中段から。眼前がフェイムゲームとなったのも願ったり叶ったり。毎年のことながら、ペースは途中で緩急が有るのだが、ジックリ構えて2周目3角から進出、坂下で先に仕掛けたフェイムゲームを捕まえるとあとは独走。完勝だった。京都の馬場が特殊過ぎるだけで、マトモな馬場で3000m以上ならこの馬が現役最強。ペースの違いは有るにせよ、過去2年よりも時計が速かったことも、今年の充実振りを示している。

フェイムゲーム

2人曳き。後肢にバンテージ。+16kg。見た目には多少太い程度。毛ヅヤも悪くないが、左浩志の出が悪いのは気になった。内枠だったが、行きたい馬に行かせて中段。とはいえ、ところどころで掛かっていた。馬を前に置いて何とか宥めようとしていたが、この頭数で壁がない場面も有り、スムーズとは行かなかった。それでも2周目3角から進出、4角で先頭に立ってアルバートには完敗の形だったが、悠々2着は確保。掛かっていなければ際どくなっていたという見方も出来るが、前走京都戦で全く動けなかったのは気性面も有ったとのことで、むしろ走る気が出ていると前向きに捉えたい。

プレストウィック

+14kg。芦毛でも毛ヅヤが良い。気配は地味だが、馬体にも張りが有った。基本的には出脚がサッパリの馬だが、3600mも有るだけに少し促した程度で流れに乗れて後方から。道中はアルバートを意識しつつ進出。2周目4角迄は食らい付いていたが、直線に向いてからの機動力が違っており、2馬身程突き放されながらも何とか3着に浮上。父ダイワメジャー、母系もメンデスに繋がる系統で、長距離でというタイプではないのだが、ズブさが良い方に向いている。

プロレタリアト

数字がない分だけ迫力に欠くが、それでも中身は詰まっていそう。デキ自体はかなり良い。好発も、出脚が速い訳ではなく中段から。好発切った分、内に潜れた。道中をコースロスなく運んだ反面、2周目4角で外へ持ち出そうとした際にアルバートに蓋をされてしまったのが痛かったが、それでも立て直してここ迄。ついでにいえば直線もプレストウィックに寄られており、踏んだり蹴ったりの競馬だったが、最高に乗って3着が有ったかといったところだろう。それでも実績を考えれば充分健闘といえる内容で、もう少し出脚が来ればオープンでも面白い存在。

シホウ

遮眼革。+14kg。毛ヅヤは良いが、腹回りが少しボテッと映る。数字分だけ太い。プロレタリアトとは出ッパで1馬身違ったが、積極的に乗られて好位から。壁がない状態でも折り合いは付いていたが、馬群の外はやはり厳しいところ。2周目4角でフェイムゲームに交わされてからはほぼ無抵抗だった。流石にプレストウィックより強い筈で、案外感は残る。絞れればもう少し機動力が来るのだろうが、この機動力のない状態で先行したのが裏目に出た気もしないでもない。