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競馬回顧 2016年4回京都

第154回天皇賞・秋(GⅠ)

モーリス

2人曳き。この厩舎らしい気合乗り。馬体の張りも前走札幌戦以上。スタート直後は有る程度位置を取りに行ったが、外からヤマカツエースとラブリーデイに来られて中段に引く形。2000mでも馬を前に置く分には折り合いが付くことは分かっており、リズム良く走っていた。直線は馬場の良い外へ持ち出し、ペースが遅かったことも有って、少し早仕掛けでは有ったが、危なげなく押し切った。エイシンヒカリの凡走は有ったが、単純に馬が強かった。二階級制覇は種馬に上がった時に生きて来る。先週のサトノダイヤモンド同様、悪い流れを払拭出来たのも大きい。

リアルスティール

2人曳き。装鞍でトラブルが有った様で遅れて入場。その割に落ち着いていた。もう少し歩様に力感が来れば理想的だが、これは前から。出脚は有る馬だが、前走同様に引っ掛かりそうになっており、引っ張りつつモーリスの直後辺りから。何とか我慢して走っていた。4角でルージュバック相手にエグい程締めていたが、向いてからは前のモーリスともそれ程変わらない脚で伸びていた。元々、体力面が怪しい馬でデキが安定しない部分は有るのだが、決め手は持っている。裏を返せば、次走は反動が出る方に賭ける手も。

ステファノス

2人曳き。水平首で推進力の有る歩様。前走の良いデキを維持。この外枠であまり行く気なく後方から。向正面では少しズブい位の行き振り。3角から馬の気持ちも乗って来た様で前に乗っ掛かりそうになっていたが、前走で前が詰まったのと、外が有利な馬場状態ということも有って、躊躇なく外へ。このペースで良く伸びているが、2着は欲しかったところだろう。リアルスティールとはちょっと差が有ったと見るのが妥当。昨年よりメンバーが強化されていた分だけ着が一つ落ちた形。

アンビシャス

2人曳き。-8kg。前走の方が迫力は有ったが、馬体が締まってこれはこれ。ゲート真っ直ぐ出ず、出脚が付かなかったことも有って後方から。1000mが1分を超えるペースでは只管内で我慢させるしかなく、直線もそのままインを突いたが、外が伸びる馬場でもうワンパンチがなかった。ただ、前走で少し触れた様に、東京の直線は長過ぎる印象も。坂を上がって直ぐの時点ではモーリスですら射程圏内だった。悪い馬場で決め手を殺がれたにしても、止まり過ぎの印象が有る。

ロゴタイプ

2人曳き。前肢にバンテージ。今年はやはりデキが良い。秋になっても好調持続。出脚はエイシンヒカリにも負けていなかったが、抵抗せず好位に控える形。ラブリーデイの前付けにも付き合わず、エイシンヒカリの真後ろに居た。今日は兎に角外有利、逃げ馬も外へ張って来る程の馬場状態で決して楽ではなかった筈だが、先行勢では唯一の掲示板。目下の充実振りを裏付ける内容。次走、香港だそうだが、結構やれるのでは?

ルージュバック

2人曳き。-4kg。デキが悪いとは思わないが、相変わらず細く映る。行きたい馬に行かせて中段やや後方から。これはこれだったが、4角で外に持ち出そうとした時にリアルスティールにフタをされ、そこで内に切り替えていたらまだしもだったが、外に拘ったのが裏目に出た。エンジン掛かってからは前ともそれ程変わらない脚で伸びている。2400mは問題なく、次走東京戦なら狙ってみたい気もするが、今季は馬体があまりにも寂しい。1戦毎の消耗も大きそうで。

エイシンヒカリ

2人曳き。前肢にバンテージ。馬体は見栄えするが、馬に覇気がなかった。ゲートを決めてハナ。行き振りが一息で、外枠から前付けに出たラブリーデイに終始マークされる格好。逃げ馬だけに4角辺りで一度突き放しておくと展開が変わって来るのだが、今日はその脚もなかった。下見のテンションの低さも、返し馬ではむしろヤンチャだった程で、どうにも掴みどころがない。

第5回アルテミスステークス(GⅢ)

リスグラシュー

トモにバネを感じさせる歩様。小さいなりに良く出来ている。出たなりで中段から。3角手前辺りからペースが落ちた様だが、序盤のペースを守って徐々に進出。ここで少し動いている分、コースロスも多少軽減されたか。直線向いて追い出しを待つ位の余裕が有り、追い出してからも一気の脚。真っ直ぐ走れない辺り、まだまだ矯正すべき点も有るが、外回って勝ったのだから今日発揮した能力に関しては文句なし。尤も、この時期に走るハーツクライ産駒、特に牝馬は意外に奥がないパターンも。右往左往するタイプは1戦毎のダメージが大きい点も懸念材料。

フローレスマジック

2人曳き。-12kg。そんなに細くは見せない。トモのボリューム感はキープ出来ていた。落ち着きも有った。半馬身程出遅れたが、出脚でカバーして中段。折り合いというよりは内外前に馬が居て、そこで大人しくしていないとどうしようもない状態。我慢して走っていた。直線向いてリスグラシューよりは遥かに真っ直ぐ走っているのだが、最後に左手前に替わって甘くなった様にも見えた。馬体細化の影響が出たのだろうが、良い決め手は持っている。

シグルーン

前肢にバンテージ。-8kg。ギスギス感はないが、多少細い。歩様に硬さがないのはせめてもの救いだが。出脚は一番速かった位だが、ツヅクが主張して2番手。最初の押さえ方だともう少し引っ掛かって行きそうな雰囲気だったが、意外な程我慢して走っていた。直線だけ馬場の良い外へ持ち出そうとしていたが、そこでリスグラシューに外から寄られる場面が有ったのは少し痛かったか。前後とも着差が開いており、3着には変わりなかっただろうが、もう少し差は詰まっていた。何れにしても出脚が有って、器用さが有るのは強み。

アピールバイオ

数字の割にボリューム感の有る造りだが、例に依ってテンション高い。少し押して道中はシグルーンと並走。下見の割に折り合っていた。これもリスグラシューがヨレた影響を受けたクチだが、その時点での加速感が全く違っていた。それでいて4着なら意外に渋太いともいえるのだが、もう少し距離が有った方が競馬はし易そう。

サトノアリシア

前後肢にバンテージ。+12kg。2歳牝馬のプラス体重は基本的に歓迎。もっと増えても良い位。ゲートは出ているが、頭が上がるレベルで行きたがっているのを宥めている内に、徐々に番手が下がり、4角では後方に近い位置。その割には最後迄諦めずに走っている。能力は持っていそう。馬体が増えた点からも体質面は問題なさそうで、あとは気性の問題。

第59回毎日放送賞スワンステークス(GⅡ)

サトノアラジン

+6kg。デビュー以来最高体重だが、太くは見せない。歩様が伸びていた点にも好感。出遅れ1馬身不利も、腹を括って後方待機。最初からインを突く気はなかった様で、3〜4角中間から外を被せに行く形で4角大外。京都の場合、有る程度4角でそれなりの位置に取り付いていないと直線向いた際にとんでもなく外へ飛ばされて距離損が有るのだが、それでも楽々抜け出した。決め手が違ったとしかいい様がない勝ち方。メリハリ利かせる競馬が今日は正解。先行させると甘い面も有る馬だが、手の内に入って来た。

サトノルパン

小ぢんまりと纏まった馬体。落ち着いているのは良い傾向。好位のインが戦前の想定だった様だが、ゲートで微妙に安目を売っており、メイショウナルトに叩かれる格好。そのメイショウナルトが下がって来たことで引っ張らざるを得ず、何度も引っ張るロスが有った。悲惨な状況では有ったが、どうも馬の闘争心に火が付いた様で、直線向いてから重心がグッと沈んで中々の伸び。サトノアラジンとは決め手が違ったが、ギリギリ2着は確保した。昨年のこのレースも引っ掛かっており、差しに徹した方が良いのは間違いないが、あまり後ろから行っても届かないケースも多く、中々難しい面が有る。

エイシンスパルタン

シープスキンノーズバンド。多少テンション高いが、スカッとした造り。好発。行けるなら逃げたかっただろうが、内から園田のランドクイーンに競られ、無駄な脚を使わされる形。それでも行き切って内ラチを頼る様に良く粘ったが、ラスト200mで同じ勝負服が2頭突っ込んで来た。今年はそこ迄ではないとはいえ、この時期の京都はイン有利。内外離れたことも有り、その分の割引は必要だろうが、前半のロスを考えると頑張っている。展開次第だが、次走も圏内。

ダンスディレクター

叩いて前走中山戦以上。馬体に張りが出て、気配も良かった。この馬としてはゲート出た方で中段辺りから。道中は大きな問題はなかった筈だが、直線向いて前が開いていたのにもう一伸びがなかった。せめて2着は欲しかったところ。京都1400mでも勝っているが、下り坂で微妙に掛かり気味。条件戦時代の追い込み一手ならまた結果も違うのだろうが、下りが良くないのかも。これなら前走の凡走も説明が付く。

ムーンクレスト

もう少し馬体にメリハリが付くと理想的だが、踏み込み力強い。このメンバーだと流石に出脚で差が有って中段。何処かで内を突く手も有っただろうが、元々先行していた馬でスムーズさを大事にして3角辺りから外を回って進出。初重賞チャレンジで0.4秒差ならまずまずだろう。本来の先行策ではないだけに割り引きたい部分も有るのだが、まだ4歳で一つ位タイトルに手が届いても不思議ではない。

フィエロ

2人曳き。+6kg。多少太い程度。一応は走れる状態。スタート直後に躓いて後方から。サトノアラジンとは近い位置に居たが、その位置を取りに行ったことで脚を使ってしまった様。元々ちょっとしたことが結果に響く馬で今日は参考外。

第77回菊花賞(GⅠ)

サトノダイヤモンド

前走阪神戦よりは馬体に中身が有る。毛ヅヤも良くなった。今日は好発。何頭か徹底先行を狙った馬が居たが、折り合いに専念して中段。1周目に引っ掛かるのは仕方がないところだが、内枠から馬を前に置いて何とか我慢。乗り役も自信が有った様で、折り合いが付いた2周目1角から何時でも動ける外へ持ち出していた。勝負どころでは外のディーマジェスティに併せて進出。2周目4角で他馬との手応えが違っていた。色々居なくなったり、他馬が自滅した印象も有るのだが、それらを含めて順調に持って来た陣営の勝利。何かズバ抜けたモノを感じないのだが、総合力が高い。勿論、ジンクスが一つ消えたのも大きいところ。

レインボーライン

前走札幌戦より馬体が締まっていた。歩様に力強さが来れば尚理想的。出脚は有る馬だが、半馬身程出遅れ。坂の下りで引っ掛かって後方から。ただ、中には乗っ掛かりそうになっていた馬も居た中、1周目のホームでは前と少し距離が取れる余裕が有り、ストレスのないところで走れたのは大きかった。勝負どころでは外を回る形では有ったが、ソコソコ流れたのと、ディーマジェスティが眼前に居て目標が立て易い競馬になった。前走同様、手応え以上に渋太い脚を使ってハナ差2着。外を回ると諦めてしまう馬も多い中、前に届く望みがなくてもちゃんと脚を使って2,3着に絡んで来るのがこの馬の良いところ。基本はマイラーだろうが、スタイヤータイプ (レッドエルディスト,ジュンヴァルカン等) 成長が遅れていたのもこの馬には良い方に向いた。

エアスピネル

前後肢にバンテージ。今日は落ち着いている。マイナス体重だが、馬体も少し絞って有る様に見える。好発。前走阪神戦が追い込みに回ってサッパリだったことも有り、今日はそのままの先行策。3番手のインへ上手く潜り込めた。この距離で行きたがるのは仕方がないところだが、2周目3角手前で馬が納得した様で、そこで矯めが出来たのは不幸中の幸いだった。2周目4角が団子になる展開もインで脚を矯めていたこの馬にとっては有利に働いただろう。どんな条件でも堅実に立ち回っており、適性を無視した能力では世代トップクラス。この距離に使うことは二度とないだろうが、2000m以下を上手く使っていけばモーリス級の活躍も充分。

ディーマジェスティ

+6kg。今日は明らかに太く映った。その分、歩様に伸びがない。前走中山戦程ではなかったが、微妙に安目を売って中段やや後方から。折り合いは付いていた方にも見えたが、結果的に行き振りが悪かっただけ。勝負どころでの反応も鈍く、サトノダイヤモンドに並び掛ける意思は見せているものの、直線でアッサリ突き放され、馬券圏内すら確保出来ず。陣営は初西下を敗因に挙げていたが、確かに太目の影響で機動力が殺された印象。

ミッキーロケット

+4kg。前走阪神戦より淡々と歩いていた。馬体に強調点はないが、ディスタンス戦だけに関係なし。ゲート五分。今日もサトノダイヤモンドをマークする形。これはこれで良かった筈だが、勝負どころから急に内にモタれており、マトモに追えなかった。それで5着なら能力は有るが、今日の内容だけだと距離が長い。

第19回富士ステークス(GⅢ)

ヤングマンパワー

シープスキンノーズバンド。スカッと見せる。淡々と歩いていた。出脚は速い馬だが、東京マイルで追い込み馬が1番人気になっていたことも有り、スタート直後からハナの譲り合い。道中はかなり引っ張っていたが、テイエムイナズマが行って好位のインに収まる形。前走新潟戦もそうだった様に、この形になると兎に角渋太い。前2頭が外へ行ってくれる展開も差し馬が苦しくなったという点で絶好。その内から抜けてくると止まりそうで止まらない。後続が来たら来ただけ伸びて押し切った。東京のGⅢでは有り勝ちな展開。天井向いた走法で基本的には直線の長いコースは不向きだが、戸崎騎手に替わって3戦3勝。最大の勝因は乗り役だろう。

イスラボニータ

+6kg。良し悪しは別にして活気と馬体の重量感は有った。ゲートが怪しいだけで出脚は有る馬だが、ヤングマンパワーをマークする形。多少気負っての追走は何時ものこと。坂下では抜群の手応え。ガラ空きのインを突いて伸びているが、ヤングマンパワーに並び掛ける迄行かず。今日は不利なく運んでいるだけに何とかしたかったところ。相手は頭が高いのだから一騎打ちに持ち込めさえすれば勝機は有った筈。久々の連対でも、かなり案外感が有る。

ダノンプラチナ

シープスキンノーズバンド。+10kg。増えた分だけ迫力は出たが、相変わらず歩様が一息。出遅れ1馬身不利。掛かり気味になっていたのを少しずつ緩めて、3角ではイスラボニータと並走。少し早目に動いて、ヤングマンパワーと似た様な位置に居たが、暫くモタついており、最後の最後に伸びて来た。一瞬でギアが上がらない。原因は恐らく歩様だろうが、勝った時は例外なく55Kg以下で、案外斤量面も有るのかも。

マイネルアウラート

遮眼革。+6kg。少しメリハリのない馬体。こんなモノだろうが、良くは見せない。好発。軽く半馬身は抜けていたが、ハナへ行く気はなく、内のテイエムイナズマに譲って2番手から。この形はペースをスローに持ち込める効用が有り、1000m通過59.8秒以上に最初の600m36.3秒が遅かった。坂下で手応え充分に前を交わし、乗り役は夢を見た様だが、坂を上がって突き放された。完敗の4着だが、最後迄諦めずに走っていた点は収穫。遮眼革の効果は有る。

ガリバルディ

2人曳き。前肢にバンテージ。一息入った影響か、馬が少し緩い。前回の東京戦がイレ込んでいたとのことで、それがなかったのは救いだが。ゲートは出ているが、例に依って後方に待機。4角でロードクエストに被される様な格好になり、立て直すロスが有ったのだが、それで居て0.3秒差なら能力は見せたといって良い。気性面の成長が著しく、折り合いが付けば切れる脚が使えたのは何より。

ロードクエスト

2人曳き。多少腹回りがボテッと映るのは体型。張りが有って、馬は文句なし。出遅れ1馬身不利。ペースも遅く行きたがっていた。コーナーを回り切る前に動いて、乗り役の意思は見せていたが、逃げ馬が外に張り出して来る展開ではどうしようもない。早目に動いた分、ガリバルディにも差される始末だった。ただ、前の馬が上手く運んだだけで、少なくとも乗り役を責めることは出来ないだろう。今日は参考外。

第21回秋華賞(GⅠ)

ヴィブロス

2人曳き。414kgの馬だが、それでも馬を大きく見せる。小さい馬に有り勝ちな歩様の硬さや非力さがないのが良い。ホームストレッチ発走ということも有り、ゲート内でマトモに駐立している馬の方が少ない位だったが、タイミングが上手く合い好発。行きたい馬が多い中で、余裕を持ちながらバラけた中段。1角迄はかなり引っ掛かっていたが、馬群が落ち着くと同時に折り合いも付いた。先に動いたパールコードを目標に良いタイミングで追い出せた。直線はパールコードが外にヨレて多少そのアオリも食ったが、難なく捕まえて快勝。姉ヴィルシーナとは全く違った決め手が有る。シンハライト、メジャーエンブレムの回避や展開利も相当大きかった筈だが、今日のところは取り敢えず文句なしの内容。ただ、瞬発力で勝つタイプは競走寿命が短くなる危険も。ヴィルシーナの様に何度も復活という訳には行かないだろう。

パールコード

2人曳き。前後肢にバンテージ。-10kg。毛ヅヤピカピカ。例に依ってスカッと映るが、トモの迫力は残っていた。これもゲートを決めて好位から。位置取りが固まる迄、引っ張る場面が有るのは致し方ないところ。先に仕掛けたカイザーバルを追い掛ける形で直線は自分の脚を使っているが、ヴィブロスの決め手に屈した。一瞬の脚がないので中々勝たせて貰えないが、堅実は堅実。前走中山戦は不利が有ってどうしようもなかっただけで、スムーズならこれ位走れる力は有る。

カイザーバル

前後肢にバンテージ。叩いて前走阪神戦以上。馬の迫力ではこの馬がNo.1。イレ込みもなく、しっかり踏めていた。最初は行く気なかった筈だが、前に壁がなかったことも有り、マトモに引っ掛かってしまい、向正面で好位。それでも3角手前で何とか一息入ったのが不幸中の幸いだったか。早目に前を捕まえに行って良く踏ん張っている。トビが大きいので良馬場限定だが、パワーは持っているので踏ん張りが利く。今後もアテに出来ないとはいえ、一番強い競馬だったのは間違いない。

ジュエラー

2人曳き。多少煩いが、叩いて順当に良化。一応これで春の状態。最初から行く気なく折り合いに専念して中段やや後方から。セコい競馬は出来たが、他馬を気にするのか、こういう競馬は向いていない様で、4角で狭いところを割って来れる脚がなかったのが痛恨。逆にバラけてからの伸びは強烈だった。これで完全復調といえるが、基本はマイラー。あとは牡馬相手に何処迄という話になろう。牝馬同士なら問題にならずとも、ケガの足踏みはそれなりに大きい筈で、現状でGⅠを勝ち切る迫力は感じない。

レッドアヴァンセ

前肢にバンテージ。もっと増えても良い位の造り。まだ馬が華奢。出脚は有りそうだが、油断するとブッ飛んで行きそうな気配が有り。ソロッと行かせて中段やや後方から。何とか宥めて馬群が密集した4角ではヴィブロスの直後。直線向いて100m程は食らい付いていたが、そこからが甘かった。今日の競馬だけをいえば距離が長い。

ビッシュ

シープスキンノーズバンド。-2kg。シルエットは前走の状態をキープ。出遅れ1馬身不利。1角手前がゴチャついたことも有り、後方から。ただ、最初から外へ持ち出し、コースロスが有ったにせよ、ヴィブロスの1馬身後方から二桁着順は言い訳がない。戦前懸念されていた輸送が祟ったか...。

第64回府中牝馬ステークス(GⅡ)

クイーンズリング

馬に集中力が有った。毛ヅヤも冴えている。休み休みの馬で、いきなりからでも満点に近い。好発。直ぐ左のシャルールが行ってくれた展開も利用しつつ、ジワッと行かせて好位3番手。前に壁がない状態だったが、序盤を除いて折り合いが付いていた。直線向いても手応え抜群で、ラスト400mの標識を待って追い出すとアッサリ突き抜けた。完勝。尤も、天気や道中の不利に泣かされることが多いだけで、これ迄底を見せておらず、マトモに走ればこれ位の力は有る。次走京都戦も期待出来るが、あとは体質の問題だろう。これだけ休み休み使っているのは何処かが弱いところは有る筈。

マジックタイム

前肢にバンテージ。+8kg。大して良く見せない馬だが、数字分だけ少し緩く映る。落ち着きがなかったのもマイナス。出脚は速い方ではないが、最内枠ということも有って、少し出して好位から。道中はその分掛かり気味。ただ、今開催の東京は後方イン突きが決まらないことが多く、位置を取りに行った点は止むを得ないところ。内でスペースも開いて、自身の脚は使っているが、クイーンズリングとは決め手が違っていた。多少距離面を疑うところ。経験で違って来る範囲では有るだろうが。

スマートレイアー

前後肢にバンテージ。真っ白な馬体だが、多少腹回りに余裕が有りそう。行けたら行かせるといった方針だっただろうが、今日は何が何でもの構えで行った馬が何頭か居て中段から。折り合いは付いており、追い出しのタイミングを計る余裕が有った程。少なくとも乗り役には瑕疵はなかった筈だが、ワンパンチがなかった。たまたま逃げたのが上手く行った昨冬を別にして、東京だとこんなモノなのかも。差しても前へ行っても堅実は堅実だが。

アスカビレン

多少トモの甘い歩様だが、毛ヅヤがピカピカでデキ自体は良い。ゲートは一番速かった位だが、折り合いを意識している内に自然と番手が下がり、中段やや後方から。油断すると引っ掛かる気性でこれはこれで仕方がないのだが、マークしたのがスマートレイアーでは相手を間違えた感も。今日は前に居た有力馬がちゃんと自身の脚を使っており、こうなると後続は手も脚も出ない。ただ、今日の上位3頭はGⅠ掲示板クラス。この馬でもGⅢレベルなら何とかなりそう。

シュンドルボン

前後肢にバンテージ。+14kg。半分回復分、半分休み明けといったところ。一応は及第点。ゲートは出ているが、行く気なく後方から。今日の展開で4角大外は実質勝負圏外だが、一瞬アスカビレンと並び掛けたところでそこから少し突き放された感も有った。メンバー中最速の上がりでも、少し疑問点が残る内容。特に右手前になってからが甘かった。東京は直線が長過ぎるかも。

第51回農林水産省賞典京都大賞典(GⅡ)

キタサンブラック

2人曳き。常に良く見せる馬だが、今日はオープン挑戦以降最低。兎に角、馬が緩かった。例に依って出脚は速い馬だが、戦前の想定通り、ヤマカツライデンに行かせて2番手。ヤマカツライデンが下見でイレ込んでいた割にペースが遅く、1000m通過が62.0秒。そんなスローでも折り合いが付くのは数多有るこの馬の長所の一つ。向正面で外へ持ち出して、何時でも交わせる様、早目に前へプレッシャーを掛けつつ、坂の下りから並び掛ける形。決め手勝負となった為、着差が大きく開くことはなかったが、自分で競馬を支配して押し切った。最初に下見の状態を貶したが、次走ジャパンカップだそうで充分間隔は有り、問題はなさそう。東京は絶望的な程適性がないとはいえ、今年のメンバーなら馬券圏内。

アドマイヤデウス

2人曳き。馬体は出来ていたが、気配に乏しい。もう少しシャキッと歩いて欲しいところ。出脚は有る馬でスッと好位のイン。乗り役も恐らくはこの展開を読んでいた筈で、キタサンブラックをマークする格好。序盤は多少折り合いに怪しいところも有ったが、内でジッと我慢して矯めるだけ矯めて直線勝負。ラブリーデイの方が入口では先行していたが、内から交わしてキタサンブラックをあと一歩まで追い詰めた。尤も、キタサンブラックはカレンミロティック相手でもハナ差の馬で、能力差はそれなりに有るだろう。この馬でGⅡクラス。

ラブリーデイ

前走阪神戦と変わらず。休み明けにしては馬体が締まっており、気配含めて満点に近い。出脚を利かせてジワッと好位。丁度、アドマイヤデウスと並走する形。スローで他馬も似た様なモノだが、2400mは所々で少し掛かってしまう。特に坂の頂点で掛かって引っ張る場面が有ったのは地味に痛かっただろう。そこで先に動いたラストインパクトに締められてしまった。何とか直線でスペースを造って一旦は2番手に上がったものの、最後は道中のロスの分、甘くなってしまった。どうせ3着なら早目に動きたかったところだろう。やはり2400mは微妙に長い。昨年の様に内々立ち回って誤魔化せるならカバー出来るが...。アドマイヤデウスとは枠順の差も有った。

サウンズオブアース

+8kg。気配は悪くないが、数字分だけ少し太い。歩様は多少良くなっていたが。ゲート内で集中出来ない癖が有る馬だが、今日はこの馬としては出た方。それでも折り合い面も有って後方に近い位置。天皇賞に続いて、武豊騎手の上手さなのだろうが、キタサンブラックにレースを造られると、後続が競馬し辛くなる。前に居た馬ですらそうなのだから、後方に居たこの馬は尚更で、完全に仕掛けが遅れてしまった。外に持ち出す時が強引だったながらも、最後は一番良い脚で詰めているが、競馬が終わった後。今日のメンバーで取り溢すのがこの馬らしい。ゲートがアテにならないのがイマドキの競馬で致命傷になっている。

ヒットザターゲット

毎回良く見せない馬だが、今季はまだマシ。歩様に問題がないのが何より。最初からインを狙って後方から。コーナーと合流地点で既にラチ沿いに張り付いており、コーナーワークで向正面では中段に取り付いていた。直線向いて、追い出して切れる印象ではなかったが、最後迄止まっても居らず、5着確保。東京2500mで強いだけのことは有る持久力を見せた。ただ、次走天皇賞へ向かう様。翌週なら本命だったが、流石に家賃が高い。

ラストインパクト

前肢にバンテージ。+10kg。元々細身の馬で緩い印象はない。外をキビキビ歩いていたのも好感。出脚が速い馬でスッと好位。ただ、決勝線上ではアドマイヤデウスと並走していたが、引っ掛かりそうになったことも有って、一段下げる形。4角から坂の下りを利して前に接近。正攻法で勝ちに行ったが、直線で甘くなった。これもラブリーデイ同様、距離が長い印象。特にこの馬の場合は良い脚が一瞬しかない。上位と闘うのはイン突き以外にない。

第67回毎日王冠(GⅡ)

ルージュバック

2人曳き。中間一頓挫が有った割に細い。デキが悪いとは思わないが...。位置取り気にせず、後方で折り合いに専念。マイネルミラノの逃げがスロー、誰もロクに鈴を付けに行かなかったことも有って直線のみの決め手勝負。こうなると54kgがモノをいう。大外へ持ち出し、アンビシャスを目標に、ラスト300mからの決め手が違っていた。セコくインを突いた馬が悉く前が塞がったのとは対照的に、躊躇なく外へ持ち出したことも有って、特に鮮やかだった。次走は天皇賞が本線とのこと。今日のガサのなさが56kgでどう響くか微妙な面も有るのだが、今年のメンバーなら圏内だろう。特にこの乗り役を確保なら2馬身プラスアルファが有る。

アンビシャス

2人曳き。更に馬体の迫力が増した。1年前とは最早別馬。今年に入ってゲートを出る様になり、特に今日はむしろ速かった方だったが、ジックリ構えて中段やや後方に待機。今日の展開で外へ持ち出す策も正解だったが、ルージュバックの決め手に屈した。一瞬の反応はルージュバックより有った筈で、追い出しを待っていた様にも見えたが、持続性で負けた格好。パンパンの良馬場の方が向いているのか、ちょっと東京の直線は長過ぎるのか。次走、軽視は出来ないとしても、少し底が見えた。

ヒストリカル

-10kg。この位がベスト体重。気の良い馬で、それが裏目にも出るが、休み明けにしては出来ている。毎度のことながら、出遅れ1馬身不利。そのまま最後方から。直線入口では少し距離を稼ごうという狙いも有ったが、スローだったことも有り進路がないと見て、外へ持ち出しここ迄。最後方でゆったり構える分には折り合いが付く。何度も述べている様に、内で詰まった馬が多く、多分に恵まれたのだが、前走同様、直線に賭ける競馬ならそれなりに脚は使ってくれる。人気で買える馬ではないが、流石にブービー人気は馬鹿にされ過ぎたか。

ロンギングダンサー

遮眼革。チャカついていたが、スカッとした造り。半馬身程出遅れて後方から。直線向いてルージュバックやアンビシャスと近い位置に居て、不利なく来れた。ただ、これも恵まれた面は否めない。広いコースが向いているのは間違いないが、前走が得意の新潟でやっと3着だった様に、程度は知れている。

ステファノス

2人曳き。水平首で推進力が有る歩様。文句なしのデキ。微妙にゲートが悪かったことも有って、少し出して中段。クラレントには前に入られたくなかった様で、その点は狙い通りに乗れた。直線向いて前が壁。マイネルミラノ、ウインフルブルーム、ロゴタイプが似た様な脚色で下がって来て、前が開いたのはラスト100m。再訂でも3着の展開を逃した。今日は参考外。

ディサイファ

+6kg。外を周回して歩様が伸びていた。気配はこれで良いが、腹回りがボテッと映る。好発切って好位のイン。ズボズボ決着では有ったが、ペースを考えたら本来なら文句なしの立ち回り。しかし、これもステファノス同様、前が壁になっていた。ステファノスの方が一瞬のキレが有って、追い上げた印象も有るのだが、この馬の場合はジワジワ脚を使うタイプで有りそうでない微妙なスペースに泣かされた。これも参考外だが、東京は少し乗り方に工夫が必要。力の要る馬場の方が向く。

日本・サウジアラビア外交関係樹立60周年記念 第2回サウジアラビアロイヤルカップ(GⅢ)

ブレスジャーニー

前後肢にバンテージ。一息入ったが、出来ていた。血統に近い馬体の馬が居らず、突然変異の様な馬。出脚はあまり速くなさそうだったが、折り合い面で急かす訳にも行かず、後方でジックリと。バラけた位置でリズム良く走っていた。追い出してダンビュライト程ではないにせよ、少し内にモタれていたが、この2頭で後続を突き放して快勝。東京1400mの新馬が3着ながら上がり32.9秒だったが、良い決め手を持っている。どちらかといえばスローの方が良いかも。

ダンビュライト

こちらは戦前述べた様に母タンザナイトに似た馬体。ただ、前走中京戦より重量感が増しており、3か月分の成長は有りそう。出たなりで中段から。ジワッと行かせて折り合いは付いていた。追い出しての反応も一番良かった位だが、内へモタれて馬群の真ん中に居たロジムーンの進路を潰してしまった。乗り役の話では他馬に気を遣ったとのことだが、平地調教注意の裁定に。とはいえ、良馬場でもちゃんと脚が使えたのは何より。あとは一線級との相手関係。

クライムメジャー

馬を大きく見せて見栄えがする。初コースも気にする素振りはなかった。好発。出脚も有りそうだったが、行きたい馬に行かせて3番手。多少掛かっていたのは確かだが、直線向いても追い出しを待つ余裕が有った様に見えた程。にも関わらず、追って伸びなかった。バリンジャーのゲート入りで待たされ、馬に気が抜けた様な負け方。これが能力ではない筈で、今日は同情の余地が有る。

ウィンドライジズ

2人曳き。下見だけパシュファイヤー。鞍下から発汗していたが、2人で曳く分には許容範囲のイレ込み。マイラー体型だが、歩様に硬さはない。ゲートは決まったが、出脚自体が速くないのか、馬に走る気がないのか、向正面では結構押していた。直線はダンビュライトに幅寄せを食らって苦しい形だったが、良く粘っている。立て直してからは3着クライムメジャーに差を詰めていた程。あと一完歩で捕まえていた。ジワジワ脚を使うタイプ。もう少し距離が有った方が良い。

バリンジャー

2人曳き。寸が詰まった体型。歩様が硬い。落ち着いていたのはせめてもの救いだが。ゲート入り梃子摺る。出遅れて後方から。後方で我慢させてレースに行くと真面目に走っていたが、それ以前の問題。3着と0.1秒差なら能力は有る筈だが...。